関テレで放送中の「セブンルール」に出ている綺麗な女性は誰だろう。
そんな興味で本谷有紀子を調べてみると、なんと芥川賞作家だった。普段読んでいる本とは少し毛色が違うが、受賞作品を読んでみたいと思い、書店で手に取った一冊。
「最近、自分の顔が旦那と似てきた。」と気が付くところから始まるこの物語は
夫婦という枠組みで同じ屋根の下で暮らしていくうちにお互いの境界線が薄れ、重なり合っていくというテーマを回りくどく(おそらく本谷らしい表現)描いている。
主人公のサンちゃんは専業主婦。旦那は家事もろくにせず、「俺は家では何もしたくない男だ」と開き直り、バラエティを見ながらハイボールを飲み続ける、見ている限り典型的なダメ夫。
ある日二人で歩いていると、旦那が吐き捨てた痰を見た女性が腹を立て詰め寄ってきた。
旦那の代わりに痰をハンカチで拭い、ただ謝り続ける主人公。女性はあなたがやったことではないのにと呟く。その時主人公はまるで自分が痰を吐き捨ててしまったかのように罪悪感を覚えたことに気が付く。
結婚は蛇ボール(ウロボロス)みたいなものだと主人公の弟の彼女が結婚をためらっている理由を作中で言っていたが、
主人公は誰か(主に元彼)と親しくなるたびに蛇ボールのようにお互いを食べ合い本来の自分がなくなり最後にはあとかたもなくなってしまう。
旦那の痰を自分の罪のように感じた主人公は既に自分という存在が旦那と意識上で同化していることに気が付いた。
旦那もある日鬱症状が出始め、仕事を休みがちになり、なぜか毎日大量の揚げ物を作り、主人公に食べさせ、ハイボールを飲ませる。
このあたりから夫婦としての役割が物語の序盤と逆転していく。
終盤ではセリフの「」が取り払われ、いったいどちらが喋っているのかわからなくなるほど個人が失われ、完全に同化していることが表現されている。
読み終えた後の率直な感想だが
正直なところ、表現が難しく、私には理解ができなかった。
結婚することで個が失われ、それを夫婦の顔が似てくるという表現を使い、主人公の個や結婚に対する考えを描いているのはなんとなくわかった。
しかし、ラストの旦那が芍薬になる表現や、同じマンションの住人の猫を山へ逃がしに行くシーンなど、本谷の描くストーリーを自分の中に落とし込み、消化することができなかった。
いろんな伏線やメタファーがちりばめられているんだろうなと思うが私には難しかったようだ。
作者の逸話だが、本谷は学生時代にバレー部に体験入部をした際、先輩に球拾いの仕方が生意気だという理由で本谷を狙って球を打ち込まれたそうだ。
普通の人ならこんな部活に入るのは止めようと思うところだが本谷は「負けるか」とバレー部に入部。そしてその態度は先輩20人にトイレで詰められても変えなかったそう。最終的に本谷は周囲に認められ部長にまでなったという。(引用元 ちょい虹:映画情報)
そういった背景も作品に反映されているのかと思うと他の作品も読んでみたいという気になる。
今タイトルを理解するために大変参考になるであろうブログのURLを貼っておく。
このひとのように書評を書けるようになりたい、、、