tyaba2書評

読書履歴としてのブログ

『ボッコちゃん』星新一

小学生の頃、父に勧められて読み始めたのが星新一ショートショート

数ある星新一の作品の中でも特に読みやすく、名作が揃っており、印象に強く残っていたのが今タイトルのボッコちゃん。

 

表題作品はもちろんのこと、「おーいでてこーい」「殺し屋ですのよ」「キツツキ計画」など、小学生が読んでも楽しめる作品となっている。

 

当時は純粋に物語を楽しんでいただけだったが、約20年経った今読み返してみると、面白さはそのままに、全く違った印象を受ける。

 

本作品の発売は1971年。前年に大阪万博が開催され、まだ見ぬ未来に国民が希望を持つ一方で学生運動は過激さを増していき、そしてジョンレノンがイマジンをリリースした年。

約半世紀も前に出版されたにもかかわらず、現代でも通用し評価され、現代社会の風刺とも取れる表現もふんだんに盛り込まれているところがすごい。

未来予知でもできたのではないかと疑うほど。

ジョージ・オーウェルの「一九八四年」やフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のような確立された近未来の物語ではなく、

もっと私たちの身近に感じるような近未来(便利な家電製品や薬品)、あるいはもっと先の未来(宇宙人や地球外生命体が出てくるような)が描かれている。

 

ひょっとすると5年後10年後50年後に再度読むとまた全く違った感想を持つかもしれない。

 

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『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル

ホームズシリーズを読み始めたきっかけは何だっただろう。

よく見かけるお薦めミステリー作品に出てきたからなのか、海外文学に憧れがあったからなのか全く思い出せない。

ただ読んでみて一つ思ったことはイメージだけで内容が難しそうだとか、自分には読むのはまだ早いだとか、そういった先入観は全てなくなっていくほど読みやすい部類の海外ミステリーだったということ。(日暮雅通氏の翻訳があってこそだが)

 

最初に読んだのはシャーロックホームズの冒険

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ボヘミアの醜聞」「赤毛組合」「まだらの紐」など12編の短編を収録した一冊。

 

お気に入りはガチョウに隠した宝石をめぐる「青いガーネット」

19世紀ロンドンのクリスマスというなんともいえない雰囲気が漂う一遍。

 

ていうかホームズって短編集なのかと恥ずかしながらここで初めて知る。

 

ホームズシリーズは56の短編と4つの長編からなるのだが、

今回のタイトルの緋色の研究は長編の中でも最初に書かれた物語。

雑誌ストランドにてホームズの短編が掲載され、爆発的人気となるよりも前に他社の雑誌に掲載された作品とのこと。

 

展開は大きな二部構成となっており、一部で殺人を犯した犯人をホームズが特定し、二部では犯人の過去や殺人に至った経緯が描かれる。

二部を読み始めた時はいきなり舞台や時代が変わり、まったく別の作品を読んでいるのかと思った。

二部のキーワードはモルモン教

モルモン教とは何かと検索エンジンで調べてまず驚いたのが厳しい戒律(避妊の禁止、所得の10%のお布施、酒煙草珈琲紅茶NG、破った場合は破門=死に等しい罰則)

もそうだが芸能人の斉藤由貴モルモン教徒だったということ。

 

i☆Risというアイドルグループが好きで、昔はライブにも参加したほどだが、i☆Risに所属する芹澤優斉藤由貴の姪にあたる。姪という関係性にそれ以上もそれ以下もないとは思うが、モルモン教芹澤優の繋がりを意識してないというとウソになる。

そこに難しい感情は一切ないが(本当に)斉藤由貴という名前を見た瞬間芹澤優が思い出されてドキッとしたことは事実。

 

それとは別にしてそういった宗派が存在していることを知らずにいたことがなにより恥ずかしい限り。

 

ホームズの華麗なる推理ではなく、違った角度で印象に残った作品だった。

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『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信

「この手記は誰にも見られてはなりません。もし見られたら、わたしはとても生きてはいられないでしょう。

それでも、書かずにはいられないのです。永遠に届かない告白が、いまのわたしには必要です。

わたしは恐い。恐ろしくてたまらない。もしやわたしが、お嬢さまの身を危うくするのではないかと思うと、とても平静ではいられないのです。」

 

米澤穂信の5つの短編からなる本書の1つ目のストーリー

「身内に不幸がありまして」の冒頭文。

 

この序文を読んだときに、うまくは説明ができないがなんて綺麗な文章なのかと驚いた。

令嬢の身の回りの世話をする少女の手記の文章なのだが、丁寧な言葉遣い、文から感じられる焦燥感、「いま」「わたし」といった部分的に平仮名を用いることで出される柔らかさ。

この冒頭文だけでグッと物語の中に引き込まれた気がした。

 

本書のアピールポイントでもある物語の「最後の一文」にも注目してほしい。

巷でよくある最後の一文のどんでん返し!とまではいかないが、ヤングミステリー賞、このミスなど数々の賞を獲得してきた米澤のセンスあるオチに驚かされ、他の4編もすぐに読みたくなる名作。

 

実はこの本、大学生の頃に購入したのだが、社会人となり、もう一度読みたいと思い再度購入した。一冊目はおそらく実家で眠っていると思う。

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『獣の奏者Ⅰ,Ⅱ』上橋菜穂子

私が高校生だったころNHKでアニメ化もされたこの作品。

 

著者、上橋菜穂子は最初に物語の主人公エリンが琴を弾き、その音色により王獣と呼ばれる鳥を手懐かせるという発想からストーリーを書き上げたそうだ。

 

物語は闘蛇(トウダ)(硬い鱗をもつ大型のトカゲのイメージ)を飼育する母との別れからスタートする。

村での禁忌を犯し死罪となった母を助けるべく当時まだ幼かった主人公エリンは駆けつけるが思いもむなしく死罪は決行、エリンも母と同じく殺されそうになるが何とか逃げることができた。

それから蜂飼のジョウンと出会い、生活していく中でたくましく、賢く育つエリン。

ある時、森の中で見た野生の王獣に出会い、その美しく強い姿に魅了される。

 

月日が経ち、エリンは王獣を飼育するカザルム王獣保護場に進学し、野生の王獣との出会いで得た知識や着想を基に立派な飼育員へと成長していく。

 

全4巻、番外1巻からなるこの作品はEテレでアニメ化されたということで子供向けだと当時の私は思っていたが、

原作を読んでみると、国同士の対立や、政略結婚の陰謀、一種の宗教的な側面、作り上げられた細かな設定がみられる作品になっている。

 

タイトルで獣の奏者ⅠⅡとしたのはそこまでしか読んでないからだ。

一連のストーリーは2巻で綺麗に終わる。3巻からはアナザーストーリーみたいなものだ。上橋もあとがきでそのようなことを言っていた。

3巻からは積読としてストックしておこうと思う。

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