tyaba2書評

読書履歴としてのブログ

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信

「この手記は誰にも見られてはなりません。もし見られたら、わたしはとても生きてはいられないでしょう。

それでも、書かずにはいられないのです。永遠に届かない告白が、いまのわたしには必要です。

わたしは恐い。恐ろしくてたまらない。もしやわたしが、お嬢さまの身を危うくするのではないかと思うと、とても平静ではいられないのです。」

 

米澤穂信の5つの短編からなる本書の1つ目のストーリー

「身内に不幸がありまして」の冒頭文。

 

この序文を読んだときに、うまくは説明ができないがなんて綺麗な文章なのかと驚いた。

令嬢の身の回りの世話をする少女の手記の文章なのだが、丁寧な言葉遣い、文から感じられる焦燥感、「いま」「わたし」といった部分的に平仮名を用いることで出される柔らかさ。

この冒頭文だけでグッと物語の中に引き込まれた気がした。

 

本書のアピールポイントでもある物語の「最後の一文」にも注目してほしい。

巷でよくある最後の一文のどんでん返し!とまではいかないが、ヤングミステリー賞、このミスなど数々の賞を獲得してきた米澤のセンスあるオチに驚かされ、他の4編もすぐに読みたくなる名作。

 

実はこの本、大学生の頃に購入したのだが、社会人となり、もう一度読みたいと思い再度購入した。一冊目はおそらく実家で眠っていると思う。

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